天皇陛下が生前退位することを決められ、平成31年には「平成」から新しい元号となることになっています。
そうなると、次に興味がわくのは、今上天皇がどのように呼ばれるようになるか、ですよね。
「上皇を使用する」とか、「使用しない」とか、いろいろと話題になっていますが、そもそも「上皇」とはどういう意味なのでしょうか?
今回は、「上皇」の意味などについて解説したいと思います。
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上皇の意味とは
そもそも、「上皇」の意味は、生前に次の天皇に皇位を譲った後に贈られる尊号「太上天皇(だいじょうてんのう、だじょうてんのう)」を略した尊称です。
9世紀頃に整備された「律令制」には、天皇の地位に関する規定はなく、「天皇」の存在自体は律令の制限を超越したものでしたが、天皇の行為については様々な規定があり、天皇が下す命令やその手続きについても事細かに規定がありました。
太上天皇についても例外ではなく、皇位を生前譲位した者を太上天皇または上皇と尊称することが規定されていました。
さらに、上皇は、天皇と同等の地位と解釈することが通例であり、しかも、実際には、上皇が天皇よりも上位であると考えられてきました。
つまり、律令制度上での上皇の意味は、以下の2点で説明できます。
律令制度上での上皇の意味
- 皇位を生前譲位した前天皇の尊称
- 地位的には天皇と同等だが、実質は上位
ちなみに、上皇が出家した場合「太上法皇」または「法皇」と呼ばれ、制度上は上皇と同じ立場ですが、出家することによって、律令制や先例に縛られない立場となり、より自由に政治活動ができたのだそうです。
また、「院」とは、本来は高僧の住まいを意味しましたが、後にそこに住んでいる人自体も意味するようになり、転じて法皇を「院」とも呼ぶようになりました。
新たな「上皇」の意味、解釈とは?
このように、歴史的に「太上天皇」「上皇」「太上法皇」「院」が意味するところについて見てきましたが、今上天皇が譲位した後はどのように尊称されるようになるのでしょうか?
2017年4月21日に提出された「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の最終報告では、これまでの歴史上で使われてきた「上皇」とは別の意味で、「上皇」という尊称を使うのが良いのではないかと結論づけています。
それでは、この新たな意味での「上皇」とはどのようなものなのでしょうか?
簡潔に言うと、本来の意味での上皇は「太上天皇の略」というものでしたが、新たな意味での上皇には「天皇という意味は含めない」ということです。
従来の意味での上皇という尊称には「天皇と同等の意味」があるため、「新天皇との象徴や権威の二重性」を回避しなければならないとする政府の思惑に反することになります。
かと言って、新たに「前天皇」や「元天皇」という尊称にも「天皇」という文言が含まれるため、新たな尊称から「天皇」という意味合いを排除することができません。
そこで、新たに「上皇」という尊称を設け、そこには、従来の「太上天皇の略」という意味を含ませないこととしたのです。
・・・・ややこしいですね。
ちなみに、この報告書では、
国際的にも、「上皇」の概念が正しく理解されるよう、適切な英訳が定められることが望ましい。
としています。
たしかに、「天皇」という意味合いを持たせない英訳をすれば、新たな意味での「上皇」が確立しやすいかもしれませんね。
なお、今上天皇の退位後の皇后の尊称としては、従来は「皇太后」が用いられてきましたが、昭和時代に広く使用された「皇太后」の英訳に未亡人を意味する「Dowager」が使われてきたため、新たに、歴史上使用されたことのない「上皇后」という尊称が提案されています。
今後、政府で退位後の今上天皇と皇后陛下の尊称が決定されることと思いますが、どのように決定するのか目が離せませんね。
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